vol.73 膝痛、腰痛になる原因とトレーナー的改善の考え方




■膝痛、腰痛への一般的なアプローチ


最近、高齢者への指導依頼を受けることが多くなりました。その目的の多くは日常生活を不自由なく過ごしたいというものです。どういうことかというと、膝痛や腰痛などの体の痛みによって生活していくことが辛いということです。


基本的には外傷での問題以外は、40代くらいまではそれほど生活レベルに支障が出るほどの問題は起きません。しかし、年齢を重ねていくと体が動かしにくくなったり、体のどこかに痛みを感じるようになります。そして、慢性的な痛みが長期間続くと病院で診察を受けることになります。


そこで関節や骨の問題を確認し、必要な場合は精密検査をすることになります。そこから注射や薬による治療、そして手術になる可能性もあります。また、治療院でマッサージ、鍼灸治療、低高周波治療器、頚椎や腰椎の牽引器などによる治療や様々な物理療法を行うなど、民間療法に頼ることも多くあります。しかし、私の所に来られる方の多くはそういう治療を行っても一向に痛みの改善が見込まれないということで相談に来られます。



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■姿勢の崩れと動作が痛みを誘発している


そこで、対象者の体をチェックしてみると、本来の自然な体とはかけ離れた状態になっていることがわかります。例えば肩の高さが違っていたり、背骨が曲がっていたり、О脚になっていたり、つま先の向きが過度に外に向いていたりといった、いわゆる姿勢の崩れがみられます。


そういう方の歩行をチェックしてみると、自然に体の移動ができません。このような不自然な体の状態で様々な動作を行うとどうなるでしょうか。


例えば、立っている時は両足の裏で均等に体重を支持していることが自然です。しかし、体が左に傾いて左足の裏に体重が偏って支持されているとします。そうすると、体重を受けている左脚に体重が大きくかかることになり、股関節や膝が少し曲がりやすくなります。すると、大腿部の筋肉は常に緊張していることになります。その状態で歩くと、当然ながら左脚を優位に体重を支えることになり、大腿部前面の緊張は更に強くなります。膝は内反方向(O脚)に引っ張られて関節はねじれが起こりやすくなり、やがて膝に痛みを感じるようになります。



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■病院での診断と対処療法


そこで、病院に行きレントゲンで関節軟骨のすり減りがみられると、変形性膝関節症と診断されます。問題がない場合は原因がわからないということになります。関節の異常があれば、前述したような治療になるのだと思います。


しかし、考えてみればそれらは問題が起きたところをターゲットにしています。いわゆる対処療法です。なぜ膝に問題が起きたのか、対象者の体はどうなっているのかを探り、そこから問題を追究していく必要があるのではないでしょうか。


立っている時に体は傾いており、歩く時に膝に負担がかかっているようであれば、それを改善することが優先されることではないでしょうか。マッサージで大腿部の緊張を緩めたり、薬で痛みを抑えたとしても一時的には回復する可能性はあります。しかし、膝に負担を与えている根本の原因を解決しないといけません。


でなければ、対象者は同じ体の状態で同じ動作を繰り返すことになるので、しばらく経てば同じような痛みが出てきます。そういうことを繰り返していくと、同じ治療を行っても痛みの軽減は難しいのです。そうなると、痛みが良くならないことにより、痛みをかばう動作が身に付いてしまいます。体は更に不自然な状態に変化していくことになります。



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■負のスパイラル


当然、痛みがあれば今まで通りの生活ができなくなり、運動量は極端に減ることになります。筋肉量は減っていき、萎縮することで弾力性が低下し、ポンプ機能が失われ、血液やリンパの流れが悪くなります。つまり、細胞への酸素や栄養の供給、二酸化炭素や老廃物の排出がうまく行われなくなるのです。

負のスパイラルに入っていくことになります。



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■重力と体のバランス


前提として、私はトレーナーであり治療行為はできません。ではトレーナーとしてどのようにアプローチをしていくかというと、それは体を自然な状態に戻していくことです。崩れている体を正常な状態に戻し、不自然な動きを自然な動きに導いていきます。 では、自然状態とはどういうものなのか。



まず、地球上で生活している限り欠かせないものが重力です。体重が50㎏であれば50㎏で地面に引っ張られていることになり、歩行では体重の約3倍の負荷がかかるといわれています。人は常に重力に抗して生きており、その負荷によって何かしらの問題が起こると考えられます。


つまり、重力(1G)とうまく付き合っていくことが必要になります。そう考えれば、体をバランス良く利用している状態を目指していくことです。



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■筋膜と関節の役割


全身の筋肉は骨に付着しており、その周囲を筋膜という膜で包んでいます。筋膜以外の組織を取り除いて、筋膜のみになっても人の形がわかるといわれています。つまり、筋膜は全身に繋がっていることになります。


部分的な筋肉の痛みや関節痛の問題は、部分的なストレスを与えていることで起こります。しかし、体を動かす時は部分的に利用されることはほとんどありません。


歩く、走る、しゃがむ、立つ、腕を曲げる、伸ばすといった動作は筋肉が繋がってバランス良く動いていることが適切です。そして、筋肉が収縮すると骨が動き、関節が運動します。この関節の動きも大事な要素です。全身の関節はそれぞれ構造が異なりますが、動く方向や範囲は基本的には決まっています。


つまり、関節の動きが構造上適切であれば、関節を痛めることは考えられません。当然、外傷や先天的な問題などはありますが、この関節の動かし方、体の動かし方を自然に整えることも大事になります。



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まとめ


まとめると、まず問題が起きた根本的な原因を見つけることです。それが現在の姿勢の崩れに影響を与えているのです。そして、立ち姿を見ることが大事です。体の崩れは筋肉のバランスの崩れであり、整えることが必要になります。


次に動作そのものの修正が必要です。それは、筋肉をバランスよく利用すること、つまり適切な関節運動を行うことです。そうすると、全身的に筋肉を利用することに繋がり、部分的にストレスを受けることはなくなり、痛みが軽減されていくことになります。


是非、一生動ける体を作るために、適切な姿勢、動作を身につけたい方は、当ジムへご相談ください。

いつでもお待ちしております


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FUJI TRAINING GYM

冨士伸之